地方創生と人口動態の誤謬

地震の復興も儘ならぬ中次々に訪れる台風の惨禍。被災された方、そこに関係者のおられる方々に心よりのお見舞いを申し上げ、1日も早い復旧と安堵できる時間の訪れますことをお祈りいたします。

今回は片岡が担当。

「地域の活性化」や「まちおこし」という地方創生に向けた諸政策。
その柱となるのは人口減少への手立てと観光等による「流入人口」の増加を図ろうとするもの。
背景にあるのは地方財源の問題。
地方行政の財源は、自主財源(地方税)と依存財源(国庫金支出や地方交付税)。国が進める三位一体改革に伴って地方分権を進めるため国税(所得税)から住民税(地方税)への税源移譲が進んでいる。つまり、地方自治体の自主財源への依存が高まっていると言うこと。これもかれこれ10年続く傾向。そして地方行政の主体は市町村。都道府県は市町村が吸い上げるニーズへの中間的な支援構造としての役割。

地方税収の拡充を目指すと自ずとその政策は、地域経済が活性化しその受け皿となる事業者が育つような施策とその地域への「流入人口」の増加策に偏ることになる。

また一方で、観光資源は乏しいが、人口が比較的集中している地方都市中心部の商業エリアの元気がない。そこで市町村は、「まちなか活性化」としてシャッターの目立つ商店街の活性化方法を考えようとし、商店会の総意としてもなんとか補助金を獲得して商店街を盛り立てたい。

しかし商店がシャッターを閉ざしているのは、客が少ないからだけではないのだ。商売の規模も小さくなった商店街で、商店を続けることに希望も抱きにくい。そして、その地を離れる次世代のことを思うに、シャッターの中の店主たちが必ずしも悲壮感に苛まれているわけでもない。

そして財源の乏しい市町村は市町村合併によりより大きな財源の元に集約を進める。そして広がった市域の郊外に巨大な無料駐車スペースを有した大型ショッピングモールが築かれる。この場所には挙って広域から家族連れがやってくる。結果的に言えば、大きな経済効果をもたらすことになる。多くの人が周辺地域からも人が集まることで流入人口からの収入も増えたとも言える。人の流入に乗じようと、ショッピングモール周辺部のまちは、地域風土や歴史的な価値のあるもの、すでに人口が減りすぎた場所では「何もない」ことの体験をウリにした観光的な取り組みを図ろうとする。しかし、車で動く多くの人はショッピングモールの駐車場に車を止めて、モールの外に出てはこない。

自治体が抱える多面的なニーズそれぞれに応えようとしてはいるが、そもそのそのニーズが異なるゆえ、それぞれに矛盾を孕んだ諸施策が打ち出され、その悲喜交々ある結果に至る。

しかし、それは本当に望まれた成果と言えるのだろうか?
地域の住民は本来自分たちの地域の風土が育んできた祭りや環境を切り売りして消耗している。

人口減少の課題に手を打つ手立てを通じてあわよくば人口増加を図ろうと目論む。
人口減少と少子高齢化は全国的な人口動態の問題であり、特定地域における「定住人口」の減少への施策の多くが期待する成果を得られない実情の原因を、各市町村の個別施策の方法論や予算規模に求めるのは適当ではない。高齢者の終の住処をと高齢者世帯の移住促進を計るところもあるが、消費と同時に重くのしかかる介護保健負担、介護事業者の雇用創造、その辺りはゼロサムの追いかけっこで、大きなプラスとも考えにくい。

地域の人々が起こす行動の熱源は、地方財政がどうなるかの問題ではなく、もっと人間に根ざしたものだ。
今一度その熱源の意味を問い直し、望むべき姿を実現することから取り組むのが大切なのだと思う。